Oakisland Marathon 2019 を振返って

マラソン・トライアスロン

2/16、North Carolina州のOakislandで開催されたマラソンに参加してきました。結果は悲願のサブ4を達成、駐在中マラソン生活最高の思い出になりました。

この大会は、24歳で始めた7年間のマラソン人生の集大成でした。日本に帰ったら今ほど練習できないし、一緒に挑戦する人を探すのも大変です(今回は優秀すぎるラン仲間に支えられモチベーションを保てたことが大きく、知識や技術を彼らから多く学びました) 。この機を逃すとフルはしばらく挑戦できない、実質最後のチャンスという気持ちで臨みました。

本格的な準備を始めたのは8月からの6カ月。7年間、ずっと5時間の壁すら破れなかった自分が、6カ月でグッとタイムが伸びて4時間切りを達成できた要因は、レースマネジメントの改善だったと思うので、その気づきや学びの過程を書き残してみます。

Oakisland Marathonのスタート時の風景。小雨の降る中、気温は13℃ほどで走るには快適な天候でした

レースマネジメントの重要性に対する気づき

問題意識:練習量が成果に結びつかない

下記の表は、私が参加した全5回のマラソンの記録概要です。

DateCompetitionTime月間走行距離
(直近3カ月)
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2012/9田沢湖マラソン3:30:28約172km21kmで走行不能、徒歩
30kmで棄権
2014/3板橋Cityマラソン5:27:23約92km24kmで走行不能、徒歩
2017/3板橋Cityマラソン5:47:00約155km26kmで走行不能、徒歩
2018/11Philadelphia Marathon4:15:37約125km37-38km走行不能
39kmで再度走行
2019/2Oak Island Marathon3:58:58約128km完走

気象条件やコースの地形、経験年数の累積などに差があるので一概に比較は難しいですが、注目したいのは「Time」と「月間走行距離」の関係です。一般的に練習量が多いほど、タイムの向上が期待されます。しかし私の場合は練習量が多い時ほどむしろタイムが悪い傾向にありました(2014年の大会はさすがに練習量が少なくあまり参考にならないですが)。特に2017年はサブフォーに必要と言われる月間150kmを3カ月にわたりクリア、直前のハーフで自己ベストの1時間34分を記録、万全の準備で自信をもって臨んだレースでした。しかし結果は、練習不足だった2014年より悪化、本当にがっかりしてもうフルマラソンは辞めようと思った瞬間でした。

解決策のヒント:マラソンにも「巧さ」が必要

フルマラソンで記録を求めることをやめ、トライアスロンや駅伝など他の種類のレースに参加していた時、多くの優れたランナーと話し合う機会がありました。そうしているうちに、マラソンは練習量だけでなく「巧く走る」ことが大事だという意見をよく聞くようになりました。自分は猪突猛進&根性主義なので「走行距離こそ命!」とマラソンを始めたときからずっと思っていましたが、補給や最適なペースの考え方など、当初は眉唾だと思って軽視していた観点も、優れたランナーはみんな実践していることに気づきました。

解決策:レースマネジメントの導入

巧く走るとは何か、巧く走るためにはどうすれば良いか。ネットで調べて試行錯誤したり、アメリカで出会った優秀なランナーたちと交流するうちに、レースマネジメントを意識するようになりました。思うように結果が残せなかった2017年以前と、大きく記録が向上した2018年以降の違いはこのレースマネジメントの実践です。具体的には①補給、②最適ペースの把握、③メンタル面、④脚の運び方の4つを意識しました。練習量については2017年以前よりも走行距離は少し減り、内容もレースペースのランしかしておらず以前と変えていないので、おそらくこのレースマネジメントの実践で1時間30分近く記録が伸びたと思っています。

レースマネジメントの実践

①補給の徹底

これがレースマネジメントで一番大きかったと思います。以下を徹底しました。

  1. レース前食事①(レース開始1時間30分前、腹持ちする餅を4個)
  2. レース前食事②(レース開始30分前、即効性のあるバナナを2本)
  3. 給水所制覇(必ず水をもらう。余裕があるときはゲータレードもセット)
  4. ショット補給(10kmから5kmおきに1袋。エネルギーとカフェイン摂取)
  5. 電解質補給(塩タブレットを5km地点と15km地点で摂取)
  6. 痛み止め摂取(5km地点で摂取)
  7. プロテイン摂取(BCAA錠剤を5km地点と15km地点で摂取)

1,2は何を食べてもよいと思いますが、レース開始時に胃での消化が終わり、栄養が体にいきわたり始めている状態にもっていければいいみたいです。

3-6は走行中ですので結構面倒です。持って走るための道具も要りますし、終盤は息も上がってる中で補給するのはつらいです。しかしマラソン中は「お腹すいた」「喉乾いた」と感じた瞬間に血糖値がすでに下がっているのでアウトです。対処療法ではダメで、予防しなければなりません。

3は飲みすぎてトイレに行って時間をロスする危険もありますが、レース直前にトイレ行っておけば大丈夫です。4のショットは自分にとっては革命的なプロダクトでした。これのおかげでかなり補給が楽になりました。5は足がつるのを防ぐ目的があります。6,7は筋肉の痛みを軽減してくれますが、タイミングはよくわからないので、序盤に飲みました(経験上、痛みはだいたい走り始めて2時間くらいでやってくるため、えいやで決めました)。

左が痛み止め、中央がBCAA、右3つがショット。走るときはジップロックに入れる

②最適ペースの把握

タイムを伸ばすためには速く走らなければならない、しかし速すぎると途中失速して結局遅くなる。。。このジレンマを解決して最適ペースを把握するために、2つの観点から見積もりました。

1つめは過去実績からの算出です。過去30km以上の距離を走った大会(と練習)の記録を12回をすべて見返し、途中でペースダウンしない最速のペースを探し求めました。これは、ネットや本、他人のブログには載っていない、自分だけしかわからない数字です。私の場合、5:20/km以上の速度で走ると20km付近で失速するが、5:50/km程度ならば30kmまで速度を維持できることがわかりました。

2つ目は心肺機能を基準にした算出です。マラソンの時の最適なペース(最後まで失速しない最速のペース)は理論的には「心拍数が最大心拍の8-9割程度となる時のペース」のようです(巷ではLT値と呼ばれていますね)。このときのペースはその日の調子やコースなどによっても変わるのですが、Garminで計測し、自分の場合はだいたい5:30/km-6:00/kmのペースの時が該当することがわかりました。

この2点から間をとり「恐らく5:40/kmのペースならば42.195km走り切れそうだ」と踏み、計画の時点で実現可能性はあると判断、サブ4を目指すこととしました。

③メンタル面

数字を意識すると思った以上にモチベーションがあがります。

面白いデータがあります。下記は、2018年のPhiladelphia Marathonの4時間前後でゴールした人の人数を1分おきにヒストグラムにしたものです。

4時間前後のタイムの分布は、対称ではなく、4時間未満側に大きく偏っていることがわかります。サブ4を意識しているランナーが多いことがわかりますし、意識することでこれほどまでに実際にタイムが縮められた人が多いのだと思います。

これはどちらかというと結果論になってしまいますが、Oakisland Marathonでは私自身も緊張感を絶やさず走り続けることで、持てるすべての物理的なパワーを出し切れました。終盤は、時間に対する厳しい制約を意識し、間に合うかどうかギリギリの不安との闘いでした。両脚に発生する激痛、低下するペース、迫るタイムリミット、息も上がって苦しい、もう歩きたくてしょうがなかった。。。それでも最後5キロほどを走り抜けられたのはひとえに、もう少しがんばれば届く、サブ4を達成したいという強い思いがあったからでした。ギリギリ実現可能な目標を設定することで、メンタル面で「折れる」ことがないようにできたのが良かったです。うまくニンジンをぶら下げてメンタルをコントロールできました。

④脚の運び方

マラソンはたいてい終盤脚に激痛を抱えます。過去はこのせいで痛すぎて走れなかったのですが、衝撃を和らげながら走ることである程度回避できるようです。これはプロのコーチなどにフォームを見てもらうのがベストですが、有識者の情報をもとに以下を意識して自分の感覚だけで実践しました。

「大きなストライドでピョンピョンと跳ねるように走るのは、速く走れるが、衝撃が大きいため長く走るのには向いていない。すり足でなるべく膝に衝撃が来ないよう、小さなストライドでチョコチョコと柔らかく走る。理想は車輪、足を柔らかく転がして走るイメージ」

アテネ五輪マラソン金メダリストの野口みずきさんは、大きなストライドが特徴で自分の身長より大きな歩幅で走っていたそうです。十分筋力があるランナーは大きなストライドのほうが記録は出ると思いますが、市民ランナーでサブ4を目指す程度ならば、上記を意識するのがよさそうです。

最後に

マラソンは努力や練習量が比較的結果に直結する競技ですが、それでも個人差はものすごいあるなと感じています。 したがって、(この記事を含め)ネットに転がっている情報は正しい・誤っているというよりは、自分にあてはまるケースはあまりないなというのが実感です。

なので、やはり痛い目にあいながら、試行錯誤と実践を繰り返して、自分だけの解決策を編み出していくことが一番しっくりきます。その一連の行為の結果、目標を達成する経験は、かけがえのないものだと思います。

自分はマラソンを通して、一度はあきらめかけた目標を達成するために、世の中にすごい人がいっぱいいることに驚き、彼らに教えを請い、その過程で仲間や知識が増え、そして「俺、まだいけんじゃん?」という根拠のない自信をつけ、自分への可能性を感じることができました。

今はちょっと燃え尽きてしまって、次の目標も特にないんですが、やっぱりマラソンやっててよかったって振り返って思います。

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