【CES 2019参加記録】①ヘルステック -個社サービス編-

ヘルステック・デジタルヘルス

CES 2019に参加するためにラスベガスに行きました。様々な分野の様々な商品・サービスが紹介されており、全部を把握するのは難しいですが、自分はヘルステックに興味があり、現場でも多くの関連するセッションに参加しました。そのハイライト・面白いと感じたところを中心に3回に分けて書き残したいと思います。

①、②はヘルステックについて。

①ではミクロな視点で、個社の製品やサービス(CES 2019に出展されていたもの)を紹介します。②ではマクロな視点で、市場全体の俯瞰的な傾向や今後の動向などに焦点を当てたいと思います。

③はCES全体を通して、ヘルステック以外で面白いと思ったサービスを紹介します。

1.前提知識

1-1.CESとは?

CESは”Consumer Electronics Show”の略で 、毎年1月にラスベガスで開催されている家電見本市です。 2018年度は160か国から約6万4000人が参加したそうです(そのうちアジアからが3万6000人)。人工知能、スマートデバイス、ウェアラブルデバイス、自動運転に関する展示など、テクノロジーのトレンドやイノベーションの発信の場として世界中に注目されています。またスタートアップが大企業とネットワークを作る場も提供されており、現場では熾烈なサービスの売り込みが行われるのも特徴です。

1-2.ヘルステックとは?

ヘルステックは健康促進・医療の発展をITなどのテクノロジーで実現する取り組みです。世界的に進む高齢化、慢性疾患・医療費の増大、医者・病院不足が問題になっていることを背景に、近年市場が拡大している注目の分野です。(デジタルヘルスとも言うみたいです。CESでは”Degital Health”が使われていましたが、まあ同じと思っていてよさそうです。)

 日本でも近年総務省が主体となり、国を挙げての推進がすすめられています(総務省の取り組みはここ)。近年、特に注目されているのは“Health Data”(健康に関するデータ)を利用した“Prevention”(予防医療)の分野です。

1-3.ヘルスデータとは? 予防医療とは?

ヘルスデータは健康に関するデータのことです。そのインプット元に基づき、下記3つの種類があります。

  1. Medical Data(治療記録・レセプトなど、病院や医療現場で収集されるもの)
  2. Fitness Data(運動記録・脈拍など、日常生活で収集されるもの)
  3. Genetic Data(DNAなど、人間が生まれながらに持っているもの)

ここ数年でビッグデータ解析の技術が飛躍的に向上しました。これらのデータを収集して組み合わせて分析することで、「今の健康状態はどうか」、「これからどんな病気にかかりやすいか」ということが分かるようになってきました。その判断に基づき「どうすれば未然に病気を防げるか」を患者に対し提言・早期に対策を開始することができるようになってきました。病気になってからの治療ではなく、あらかじめそれを防ぐこの取り組みを、「予防医療」と呼んでいるのです。予防医療は、一般的に病気が顕在化した後の治療よりも低コストで行えるとされています。①患者が病気で苦しまずに、②医療費の増大を防ぎ、③医療的なリソースをより必要な人に振り分けられる、というメリットがあります。

2.具体的なヘルステックのサービス・プロダクト

CES 2019 に出展されていたヘルステック系のサービス・プロダクトを紹介します。大きく下記3つに分けました。

  1. Medical & Health care
  2. Fitness & Sports Tech
  3. Sleep Tech

主流はやはり1.で、なかでもスマートウォッチ・リストバンド型ウェアラブルデバイス(ヘルスデータを収集しスマホで表示する系)に関する各社のブースが会場内に乱立していました。ただ、正直市場は飽和状態で製品自体に目新しさはなく、ここではスマートウォッチ系以外の紹介をします(スマートウォッチ系はどの製品もアップルウォッチやFitbitと大差ないです)。伸びてるなと感じた注目のトレンドは「Fitness & Sports」の中でもコーチングをするサービスと、「Sleep Tech」です。睡眠の質を上げるためのプロダクトが目立ちました。

2-1.Medical & Health care

2-1-1.Corbit

リストバンド型ウェアラブルデバイス。レッドオーシャンのこの市場で、ターゲットを老人に絞ることで差別化を図っています。よくある心拍数や歩数の計測機能の他に、転倒検知・通知機能を備えています。ユーザが転ぶとそれをあらかじめ登録してある家族などのスマホに転送し、状況を伝えることもできます。

左がリストバンド。リストバンドにディスプレイがないのは、ご老人はあまり小さい画面を見ないからか?

2-1-2.Abbot

糖尿病患者向けに、体内にインプラント型チップ、肌にチップ型ウェアラブルセンサーを装着し、血糖値を測定、データを収集・分析し、患者への医療的アドバイスができます。糖尿病患者の血糖値は日に4回以上測定することが治療のためには好ましいですが、実際は1.6回程度しかされてこなかったそうです。Abbotのデバイスの使用により、平均で13回/日の測定がされるようになり、かつ測定回数の多い患者ほど、血糖値が低くなる(≒正しい血糖値管理ができている)ことが証明されました。

ウェアラブルデバイスからワイアレスでスマホにデータを送信
収集されたデータはクラウド上に置かれ、医師も参照できるようになる。
データ収集頻度の高いユーザほど、血糖値のコントロールが上手にできていることが統計上明らかに

2-1-3.Muse

ヘッドバンド型ウェアラブルデバイスです。脳波を測定、疲労度を「Cognitive Score」として表示する。現在・過去の脳波や疲労度の変遷をスマホ上で閲覧できます。一般のユーザの利用はもちろん、アスリートや宇宙飛行士などのコンディション管理が重要な人々に対しても、パフォーマンスの管理・事前の予測の手段として利用されます。今後は呼吸・心拍に関するデータも併せて収集できるMuse2が2019年に発売予定。

Museのヘッドバンド。オレンジの基盤?を額に触れるように装着
通常時(緑)と疲労時(オレンジ)で脳波に大きな差があることがわかる
スマホ上のダッシュボード画面

2-1-4.AIHuB

韓国発祥 、医師向けのAIによる診断支援システム。 CTスキャンやMRIスキャンの結果をAIHuBに読み込ませることで、可能性のある病気を示唆し、人間による見落とし等を防ぎ正確な診断を支援します。IBMのワトソンなどでも同様のサービスがありますが、AIHuBの強みは、脳の病気に関しては診断精度が高いことにあるそうです。背景には、韓国の病院ではPACSと呼ばれる医療情報の共有サービスが発達しており、診断画像についての病院間の共有がされており、画像解析が進んでいることにあります(日本では、医療情報は基本的に病院内に閉じるため、そういった大量データの共有・解析がしにくいという背景があります)。ただ韓国の医療法(KFDA)はクリアしていますが、日本・米国・欧州の医療法は現在申請中のようです。

複数のAIを組み合わせて診断結果の精度の向上を図る。同時に分野の異なる複数の医者に診断してもらうような感覚
疑われる病気の種類や箇所を表示

2-2.Fitness & Sports Tech

2-2-1.Asensei

スポーツ全般のコーチングのための、センサーを内蔵したウェアです。Asenseiを着てトレーニングをすると、そのモーションをすべて定量的にトラッキングしてくれます。そのデータに基づいてプロのコーチが、モーションの改善のためのコーチングをしてくれます。従来のスポーツ系のウェアラブルデバイスは、結果の測定がメインでしたが、Asenseiは結果を出すためのインプット(=コーチングによる、結果を出すためのメカニズムの教示)に重きを置いている点が特徴です。

センサー内蔵型のウェアを着て、コーチングを受けながら練習ができる。
ウォッチではなく服なので、モーションを定量化できる。また、結果の測定だけなく、技術を教示
共有されたデータに基づいて、ビデオでもコーチングしてもらえる。

2-2-2.ChiTek

ランニング用のコーチングウェアラブルです。今やスマホでもランニングアプリは多数あり、GPSによるペース・距離のトラッキング、心拍数の計測はできています。ChiTekもそれは実装していますが、差別化の特徴は、①ウェア(服)に組み込まれたファブリックセンサーと、②ソール(靴底)に組み込まれたセンサーによる、ランニングフォームのコーチングができる点です。スマホを持って走る煩わしさから解放され、正しいステップの仕方を示唆してくれます。妊婦向けの、体の負担の少ない歩き方なども示唆してくれるそうです。

お姉さんの左手のあたりにファブリックセンサーがあります
一見ただのソールだが、中に薄くて小さなセンサーが4個配置されており、ステップを検知。
右上の鍵盤のようなものがファブリックセンサー。右下のボタンのようなものがソールの中のセンサー。触ると左のモニターに血圧や、押した強さ(ステップの強さ)がグラフで表示される。

ステップした時の、足のどこに体重がかかっているかが表示されている。前のめりになっている、右足に負担がかかっている、などがわかる

2-3.Sleep Tech

2-3-1.Sleep number

センサーを組み込んだマットレスです。寝ているときの呼吸のリズムや心拍数、やレム・ノンレム睡眠の時間のデータを収集し、睡眠の質をスコアにしてくれます。すごいと感じたのは、イビキ検知・防止機能があることです。呼吸の様子からイビキを検知すると、自動的にマットレスが変形し首を持ち上げ、イビキを止めてくれるのです。またNFL(アメリカンフットボール連盟)と協力している点も特徴で、アスリートの睡眠の質の向上や、マネージャに選手の体調管理に関する情報を提示できるといった使い方もあります。

イビキを検知すると頭が持ち上がる。それとは別にリモコンでも計上を変更可能。
呼吸のペース、心拍数、レム・ノンレム睡眠時間、をもとに睡眠の質をスコアに

2-3-2.Sleep score

睡眠の質を測定するスマホアプリです。アプリをいれたスマホを、寝ているときに横においているときに各種情報をスマホが収集し、睡眠の質をスコアで表示してくれます。同じスコア測定と言っても、2-3-1のSleep numberより計れる項目は少なく機能は劣りますが、無料でお手軽版の印象です。

1週間分のスコア履歴は無料版で参照可能。それより過去は課金が必要
睡眠の時間や深さなどから、スコアを算出

2-3-3.Dream Light

睡眠の質を上げてくれるアイマスクです。マスクにはスピーカーが内蔵されており、装着すると耳元で音声が流れ、リラックスしやすいような呼吸のリズムのインストラクションが行われます。さすがにつけたままでは寝れないので、眠る前に(今はやりの)マインドフルネス向上を促す、という効果が期待できるそうです。

左のポスターの女性がしているのが商品。結構重い。。。
マスクの裏側。両端から音声が出る。目の部分は音声に合わせ、リラックス用のライトが点滅

2-3-4.Dream box

オフィス用の昼寝カプセルです。中に入って音楽や照明の色を変えられます。謳い文句として、睡眠で効率的に回復できるそうですが、クッションが硬くていまいち。。。

中はライトやBGMを、コンソールで変えられるようになっている。

3.終わりに

今回はヘルステックについて、ミクロな視点で、個社の製品やサービス(CES 2019に出展されていたもの)を紹介しました。次回はマクロな視点で、市場全体の俯瞰的な傾向や今後の動向などに焦点を当てたいと思います。 ヘルステック市場の課題であったり、人々の関心の方向や、どういう分野が今後伸びそうなのか、インサイトを書ければと思います。

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